ー【全国患者の会】ー

-予防接種健康被害救済制度-
審査請求で分かった様々な問題
予防接種健康被害救済制度(以下、救済制度)の結果が「否認」や「部分認定」であった場合にも、その結果が不服であるとして、行政不服審査法に基づき審査請求を行うことができます。
しかしながら審査請求を通じて、この救済制度自体や、審査請求にかかる問題も分かってきました。
ここでは、これらの問題についてを記載します。
※本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言にはあたりません。必要に応じて専門家(弁護士など)にご相談ください。
審査請求について、明らかになってきた問題
1.厚労省の審査内容に不服があっても、市町村の過失にしか異議を申し立てできない
※後続の「救済制度の申請後の流れと、審査請求の齟齬」で詳しく説明します。
2.厚労省で審査された内容は、審査請求の争点にならないケースが報告されている
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「明らかに症状があるのに症状がないことになっている」など厚労省で行われた審査に不服があった場合、審査請求で異議を申し立てても「厚労省で行われた審査内容は争点にならない」として、厚労省の審査内容には全く触れられないまま棄却されたケースが報告されています。
3.審査には諮問が不要とされているため、調査委員会で話し合われた内容をチェックする第3者(医師など)が入らない
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市町村の「予防接種健康被害調査委員会(以降、調査委員会※下欄に説明あり)」では、ワクチン健康被害のことをよく知らない医師が委員になっていることがあります。調査委員会が必要な助言を行っていたかを審査するためには、ワクチン健康被害に詳しい医師などの専門家が審査に入る必要があるでしょう。
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しかし、救済制度の審査請求の場合は、行政不服審査法第43条第1項において諮問(専門家が入ること)が不要と定められているため、専門家による諮問を申し出ても「不要」として取り合ってもらえなかったという報告も上がっています。
<ご参考>行政不服審査法 事務取扱ガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_content/000904363.pdf
p107 表12の「ア 処分や採決の際に審議会等の議を経ている場合」に該当
4.審査は都道府県職員が市町村職員の判断を裁く構造のため、自治体同士で審査がされ第3者性や公平性に疑問がある
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都道府県の審査庁の長は都道府県知事ですが、実際に審査を行うのはワクチン担当部署(多くは感染症対策部門や健康福祉部門)の職員になります。
つまり、感染症対策課の担当者が、関係の近い市町村の処分を審査することになり、「身内審査」に近い構造になっています。 -
本来、審査は利害関係のない外部の第3者が行わないと公平性を担保できませんが、ここでは内部審査に近い構造です。
救済制度の申請後の流れと、審査請求の齟齬
(ご参考)救済制度の審査の流れ
救済制度は、【市区町村の窓口に申請】後、市区町村➡都道府県を経由して国に届き審査されます。
そしてその審査結果も、国➡都道府県➡市区町村 という形で、市区町村から申請者に、審査結果が知らされます。

審査請求で審査される対象
審査結果に不服がある場合、都道府県に【審査請求】します。
これは、都道府県が審査庁として審査を行うためで、審査の対象が都道府県というわけではありません。
実は、予防接種健康被害救済制度の結果を審査請求する際、その審査の対象は【市町村】になります。
つまり、厚生労働省が救済制度を審査しているにも拘らず、審査請求の対象が市町村になっているのです。
ここが、予防接種健康被害救済制度にかかる審査請求で、大きな矛盾点になっています。

審査請求のポイントとは
弊会でも、まだこの審査請求が通ったという報告がなく、厚労省の情報を確認しても、審査請求が通った後に開催されるはずの「予防接種健康被害再審査部会」も、コロナワクチン被害に対して行われておりません。(2025年7月28日現在)
そのため、「弊会でもまだまだ手探りな状態である」というのが現状です。
審査請求の際に、一般的に検討されることが多いのは次のような点です。
※下記は参考情報であり、個別案件によって異なります。
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市町村の「予防接種健康被害調査委員会」がその責務を全うしたか
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市町村から、誤った情報を国に進達していないか
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予防接種健康被害調査委員会とは
市区町村は、申請者から救済制度の書類を受け取ったら、その書類に不備がないかを確認します。
窓口担当の方による確認だけでなく、「予防接種健康被害調査委員会」(以下、調査委員会)として、医師会の医師なども参加した会議の場でも確認が行われます。
➡調査委員会については予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律の一部等の施行についての第10項に定められています。
予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律の一部等の施行について
第一〇 予防接種健康被害調査委員会
1 設置
市町村長は、予防接種による健康被害の適正かつ円滑な処理に資するため、予防接種健康被害調査委員会(以下「委員会」という。)を設けるものとすること。
2 任務
委員会は、市町村長からの指示により主として予防接種による健康被害発生に際し当該事例について医学的な見地からの調査を行うものとすること。具体的には、当該事例の疾病の状況及び診療内容に関する資料収集、必要と考えられる場合の特殊検査又は剖検の実施についての助言等を行うものとすること。
なお、下図は、委員会の任務等の概要を示したものであること。
3 組織
委員会は、市町村長、地区医師会の代表者、保健所長、専門医師等をもって構成されるものであること。
なお、専門医師等については、貴職において専門医師集団を編成し、その中から適任者を管下市町村長に推薦されるよう配意願いたいこと。
4 経費
委員会の設置運営に要する経費については、昭和五二年度政府予算案において国庫補助金が計上されているが詳細については、おって通知するものであること。
この調査委員会で、「議事録」「報告書」「非接種者経過概要」という書類が作成されますが、これらは私たちの申請した書類とともに、国に進達される書類となります。
そして残念ながら、調査委員会の議事録等を開示請求した会員たちから、下記のような報告が相次いでいます。
・調査委員会は資料収集のアドバイスではなく、調査委員会の責務ではないことを実施していた
※委員がそのワクチンの影響であるかどうかを審査し、一方的に「ワクチンではない」と言われた言葉が議事録に残っていた(審査は厚生労働省の業務であり、調査委員会は厚生労働省が正しく審査できるために必要な書類や検査をアドバイスする立場となる。)
報告例として、私たちが医療機関でよく言われた「心因性」「精神的なもの」といった言葉が並んでいる議事録もありました。
本来であれば決めつけではなく、それを裏付ける検査や資料を求めて頂きたかった、と患者としても心を傷める事例でした。
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2025/5/16の厚労省交渉で、「市町村からの資料は参考にされているのか」という質問をしたところ、厚労省職員より「進達の中には入っているので」という回答がありました。
市町村で作成される資料も、審査に重要な資料であるということです。
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一方で、調査委員会で作成された資料が、正しい内容であった会員もいることも事実です。
そのような場合、厚労省の審査内容を審議するための手段は、本当にあると言えるのでしょうか。